藤原肇『あらかねの器』発売を祝して。

Life isn't about finding yourself. Life is about creating yourself. 

『人生とは自分を探すことではなく、自分を創ることだ』

 イギリスの劇作家バーナード・ショーは、人生についてこんな格言を残している。今日はそんな一つの人生を振り返るのにうってつけの日だ。

 

 「アイドルマスターシンデレラガールズ」のソロCDといえば「CINDERELLA MASTER」シリーズだ。その56枚目のCDに、藤原肇が歌う『あらかねの器』が収録されることになった。このシリーズが始まって苦節8年と4日の出来事だった。私が彼女に首ったけとなってから約5年なので、それ以上前から好きになった人からすれば、想像を絶する長さであったことは想像できる。様々な見方があると思うが、私も御多分に漏れず今日という日を首を長くして待っていた。それだけに、手にした感動は一入だった。

 

 

 今日更新したブログは正にCD発売を個人的に祝い、記録する目的がある。藤原肇を好きになったが故の感動を綴るので、お目汚しになることがあると思うが御容赦願いたい。

 歌詞を考察してみたら、彼女の歴史を振り返ってみたくなった。

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 藤原肇とは岡山県出身のアイドルで、アイドルに憧れ単身上京した16歳の女の子だ。陶芸家である祖父の影響で備前焼への造詣が深く、自身も陶芸家の未来を見ていた一方で、陶芸ではない違う世界を見たい欲求と表現力の苦手意識を克服するためにアイドルの世界へ足を踏み出した。

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 肇はオーディションで、自身が作った焼き物を披露し、地味で面白くない、これが今の私と批評する。肇の土台には信念である焼き物があって、素人の私には到底理解できない境地に彼女の表現力への悩みがある。彼女をプロデュースしていくことで少しずつ陶芸家の生活が垣間見えてくるので、ストイックな性格にも頷ける要因が数々見えてくる。

 肇は地味で面白くないと言った器は自分自身だと自覚した上で、表現の引き出し方や面白さを追求し出す。

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しかし、私が彼女に敢えて言うなれば、

肇のポテンシャルは肇が考えているよりも更に高いところにある。

 

 だからこそ『あらかねの器』には感動した。感極まってせっかく淹れたコーヒーが塩っぱくなるほどだ。

 

 結論から言うとこの曲は、山紫水明を愛し大地を讃頌する肇が信念を込めた唄なのだ。ご存知作曲椎名豪さんと作詞森由里子さんによる作品なのだが、歌唱力というハードルを乗り越えたと感じさせてくれる歌だ。この曲を渡したプロデューサーの、お前ならできるだろうという挑発と信頼の様子が目の前に浮かぶようで。

 比較や優劣ではないが、私はこの曲が何かのように凄いとか、そういった分かり易い表現で誰かに薦めることが憚れてしまう。「尊い」という言葉はインターネットによってスラング化しどうしても軽く感じさせられる今日だ。しかし掛け値なしに、肇の信念と憧れを真っ直ぐ目指した姿勢は非常に尊いだろう。

 

揺らめく川面に浮かぶ 星屑を掬い上げてた

ひたむきさを土に込めて

あらかねの器/歌:藤原肇

©︎BANDAI NAMCO Entertainment inc.

 ここにおける「星」とは、アイドルへの憧れ。それを魂にある器に注ぐ。拙く不器用だけど、山紫水明を愛する心を歌にする。

 つまり「あらかね」とは、精錬を重ねていくことで自信と輝きを兼ね備えていくことだ。それが肇が目指したアイドル像。藤原肇が創ったのは人生そのものだった。

 

 

 そんな肇に命を吹き込んだのは鈴木みのりさん。私は彼女に首ったけである。以前もブログに認めた彼女への出会いに対する感謝の念を、またここでも綴らなければならない。

下記、鈴木みのりさんを綴ったエッセイ

好きなこと、鈴木みのり、ROUND TABLE、合流。 - 教室窓ぎわのまどろみ

 

 椎名豪さんが手掛けた楽曲を歌うアイドルマスターのキャラクターは総じて「歌姫」と呼ばれている。如月千早然り、高垣楓然りだ。私は彼女らのポテンシャルを司りながら形作られた楽曲を聴いて、惚れて、嫉妬した。こんな名刺のような一曲を担当アイドルが歌ってくれたら幸せだと思った。だからこそ、この信頼は少し残酷でもあった。私の口からは歌姫になれとは言わない。言えば呪いになるからだ。

 この曲を歌い上げた肇には、彼女に言いたかった「更に高いところ」を伝えてあげたい。その上で、しっかりと涙を流させてもらう。

 

 

 鈴木みのりさんに感じた魅力は肇と合致する。そのひたむきさに惚れ込んだ。二人に共通する美意識、それは「過去を嫌いと言わないこと」。肇は備前で築いたもの、備前焼への苦悩。みのりさんは愛知での過去。一意専心、凛とした姿勢、幾つもの過程を経たからこそ彩りを持った。

誰もその魂にある

たったひとつの器

夢を容れておくのならば

磨こう

輝くために

あらかねの器/歌:藤原肇

©︎BANDAI NAMCO Entertainment inc.

 

 今日は祝酒を開ける。一つの可能性が、一つの目標が達成された。受け止め方は人それぞれで、そこに全ての考え方がある。こんなご時世だけど、心に少しばかり余裕が生まれて、色々な考察を読めることを願い続ける。

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