反復の終わりとその後の世界で。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想

この記事は2021年3月8日公開『シン・エヴァンゲリオン劇場版 EVANGELION:3.0+1.0 THRICE UPON A TIME』のネタバレ、感想を含みます。

 

 

 

 さて、主に私生活の吐き出し口がTwitterにおける私が、このようなところで陳腐な言葉を並べて27年にも及ぶ超大作アニメーションを斬って煮て食べる。そのようなことができようか。

 

 

 正直のところ『エヴァ』シリーズを初めて観たのは4年前のことで、突然手に取ったきっかけも「ただの暇つぶし」だった。観れば観るほど不可解で、ただ大人の事情に巻き込まれる子供という構図がしみじみと世知辛さを植え付けていく、といった思い出に昇華されていた。

 同時期に社会に投げ出されたからこそ、そのしがらみと遣る瀬無さに「仕事だから」と割り切って心はどんどん冷たくなる。

 世の中は反復だ。仕事、偶にある褒美、そして飽和する趣味。それらを繰り返して擦り減った身を継ぎ足しているに過ぎない。

 

 では碇ゲンドウの反復とは何だったであろうか。碇ユイの存在する世界の構築に躍起になり、人類補完計画を推進し実行した。全ての終わりは、神に支配されるか、神を殺して人が人ならざる物に変わるか。そこに反復はない。あるのはLCLの形成する身体だけだ。

 

 それはあまりにも虚しいではないか!と叫ぶ私の心は、擦り減った心を継ぎ足した反復によって形成されていた。

 

 そんな虚しさと対を為すけじめと潔さに涙が溢れるのは仕方のないことだ。

 けじめを貫いた葛城ミサト。心の強さの根幹を違わず、逃げなかった碇シンジ。最期まで彼への好意を持っていた式波・アスカ・ラングレー

THRICE』に隠された物語の数々を受け止める事は視聴者の使命だ。

 仕事のような虚しいドラマにも、仕事のように潔い物語の結末を迎えることができたことは、’20年代を生きる中でこの上ない幸福だろう。

 

 

最後に庵野秀明監督以下制作スタッフとキャストの方々、長い長い製作期間、大変お疲れ様でした。

 

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