「生きるのは最高だ‼︎」ーBUMP OF CHICKENツアーを振り返るー

aurora ark 0922 nagoya dome

とても素晴らしい日になると思っていた。
心の中で覚悟をしていても、現実を前にすると衝撃に打ちのめされる。
私が受けた“臆病者の一撃”は、賛歌に聴こえた。

 

 


BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」ナゴヤドームday2の感想です。
まだこのツアーを観てない方にはセットリストを含めネタバレになるので、ここから先は自己責任でお願いします。


それなりに長文になるので時間の許す方はお付き合いください。

 


BUMP OF CHICKEN
Vocal&Guitar 藤原基央(藤くん)
Guitar 増川弘明(ヒロ)
Bass 直井由文(チャマ)
drum 升秀夫(ヒデちゃん)

 

 

 

 


ーーーーーーーーー★★★★ーーーーーーーーー

 

 

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かなりポエミーに書き始めたが、BUMPの詩的な表現にアテられてるだけと自分に言い聞かす。
今回、過去の自分と照らし合わせてライブを観ていた。かっこいい言葉遣いに憧れて真似してた時代を少し恥ずかしく思いながら、彼らを知った経緯を回想した。

『魔法の料理 〜君から君へ〜』の優しいメロディに興味を惹かれて、ネットで曲名を検索したところから始まった。


何かにハマる時というのはあっという間だということも、旧譜を集めることへの労も厭わないエネルギーがある。それが心地良くて、人は趣味・興味を構築できると考える。

 


新譜「aurora arc」を提げ現在絶賛ツアー中のこの公演は、ライブになかなか行けないかった近年を清算する最大のチャンスだった。

 


セットリストを一曲ずつ振り返っていく


01.aurora arc
アルバム『aurora arc』収録
オーロラの閃光を想起させるメロディライン。
彼らがアルバムを作るにあたってカナダで見たオーロラの感動を共有する意味を含んでいるらしい。
藤くんの作曲家の一面を大いに発揮するのが、アルバムの一曲目に持ってくるインストなのかもしれない。閃光のようなレーザー演出で浮世離れする。

 


02.Aurora
アルバム『aurora arc』収録
表題曲。
「aurora arc」からバトンを受け取ったような曲調から始まる。個人的には「星の鳥」から「メーデー」への繋がりに似てると思う。
この曲の歌詞に「ああ、なぜ、どうして、と繰り返して それでも続けてきただろう」というフレーズがある。
BUMPの真髄である相手の心に土足で踏み込まない一歩引いて、だけど必ず核心を突く姿勢の一端を垣間見ることができる。
藤くんの第一声は、息がつまる衝撃だった。

 


03.虹を待つ人
アルバム『RAY』収録
オーロラと来たら虹なのか。
本当にBUMPは観客参加型の楽曲が増えた。
ハミングまでしっかり記憶できるのは彼らの魅力の一つだ。「叫べ名古屋!」なんて煽られたらもう大絶叫である。
「虹を呼ぶ雨の下 皆同じ雨の下
   うまく手は繋げない それでも笑う
   同じ虹を待っている」
あの大絶叫は虹を呼んで、レーザー演出ではレインボーカラーで迎えてくれた。

 


04.天体観測
アルバム『jupiter』収録
お馴染みの一曲だが、始まりは「イマというほうき星〜」からの煽りだった。
「背が伸びるにつれて 伝えたい事も増えてった
   宛名の無い手紙も 崩れる程 重なった
   僕は元気でいるよ 心配事も少ないよ
   ただひとつ 今も思い出すよ」
イマから過去の思い出へ伝えたいことは山ほどある。悔しさ悲しさをなんとか伝えたいと叫ぶのがこの曲の主題である。

 


05.シリウス
アルバム『aurora arc』収録
このアルバムでガッツリなロックは少ないが、これはその一曲。ヒロのギターテクニックとチャマのベースがとにかく格好良い。
「一番好きなものを その手で離さないで」
彼らを想起する中で、多くは持てないが大事なものは手離させないエールを受けた。

 


06.車輪の唄
アルバム『ユグドラシル』収録
いやマジでびっくりした。カラオケで手拍子しながら歌ってた曲が目の前で演奏されるとは思ってなかったし、むしろ何年前の曲だっけ…と狼狽する始末。
この曲は語るより聴いてほしい。この曲の君と僕が、リスナーにとって誰に向けて歌っているのかを想像するのが一番の楽しみではないだろうか。
何よりみんなでクラップできて最高でした。

 


07.Butterfly
アルバム『Butterflies』収録
EDMでクラブ感の強いこの曲は、音楽フェスの要素を孕んでいる。
ライブ会場だとゴリゴリのドラムとベースがより感じられるが、正にこの曲はその答えだ。
「誰かの掲げた旗を 目印にして
   大人しく歩くけど 作った旗も隠している
   このまま終わるものだって なんとなく悟り
   笑って歩くけど 作った旗が捨てられない」
自分を前面に出せない人、ちょっと臆病な自分への図星であり応援歌だ。

 


08.記念撮影
アルバム『aurora arc』収録
一目惚れというのは人生でよくあること。それは生きていく中で抗えないものだと思う。
「迷子のままでも大丈夫 僕らはどこへでもいけると思う」
このフレーズが大好きで、BUMPのファンは皆等しく塞ぎ込み膝を抱えた経験を持ち合わせていて、そんな過去へいまの自分が全力じゃないそれなりのエールを送るのがBUMP OF CHICKENなのだ。藤くんの「どこへでも」がどれだけ伝えたかったのか、あのハイトーンに籠っていた。

 


09.真っ赤な空を見ただろうか
アルバム『present from You』収録
エンドステージから花道を通って後方の壇上へ移動しての演奏。その間にアリーナへ降りてファンとハイタッチする様に感動と羨ましさを覚えた。
「夕焼け空 きれいだと思う心を どうか殺さないで
   そんな心 馬鹿正直に 話すことを馬鹿にしないで」ポエミーになることは恥ずかしいことじゃないが、感情が揺れ動いた時にこんな表現になるのは性だ。
誰も馬鹿にできない。
スタンドから見たリウムバンドの赤い光が本当に美しくて涙が出た。

 


10.リボン
アルバム『aurora arc』収録
詩的で、どこまでも詩的。
私たちが生きていく中での苦痛を受け入れ理解してくれた歌詞。語ることが少ないんじゃない、言葉にできる領域を超えた楽曲なのだ。

 

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11.aurora arc
アルバム『aurora arc』収録
後方のステージから移動してきて幕間に流れる。
ラストの盛り上がりでインストのギターやベースに合わせる形で参加するバンドメンバーが半端なくかっこいい。

 


12.望遠のマーチ
『aurora arc』収録
これが聴きたかった。これを待ってた。いや、全部聴きたかったんだけどこのアルバムでは一番思い入れが強いというか、、、語るに落ちる!!!!!


「夜を凌げば 太陽は昇るよ
   そうしたら必ず また夜になるけど」ーー日々の繰り返しは否定じゃない。


「心はいつだって 止まれないで歌っている
   死んだような今日だって 死ねないで叫んでいる」ーー落ち込む日もあるけれど心臓は動き続ける。


「世の中に沢山の音楽がある中から俺たちの音楽見つけてくれたんだろ?
だから俺たちもお前のこと見つけにきたぞ!!」

 


いこう、いこうよ、希望、絶望、何もかも引っ括めて生きていこう!これこそ賛歌だ、最高だ、大絶叫だ、生きてるって実感だ、生きててよかった。

 


13.GO
アルバム『Butterflies』収録
アーティストであり作曲家の一面も見せる藤くんが書いた曲の中でも極めて煌めいたメロディで構成されている。
全面的な自己肯定感よりは、周りに合わせるけど自分の感情も大切にしたい人に向けた一曲。
ただただ美しかった。

 


14.Spica
アルバム『aurora arc』収録
収録音源はドラムではないのだが、ライブ仕様としてヒデちゃんのドラムはエモーショナルに作用した。
これからは「行ってきます」を少しかっこよく言える気がする。

 


15.ray
アルバム『RAY』収録
イントロのチャマのベースも大好きだし、リウムの色が緑色になる瞬間が尊かった。
ジャンプしてクラップして一体感を生み出す。
○×△もできた。
そして叫ぶ。
「生きるのは最高だ!!!!!」

 


16.新世界
アルバム『aurora arc』収録
歌詞の一つ一つが人間賛歌であり、not A but also B の構文がしっくりくる。
「ハズレくじばかりでも 君がいる僕で一等賞」
「天気予報どんな時も 僕は晴れ 君が太陽」


BUMPには珍しく愛を叫ぶ曲だが、そんな中にも照れ隠しを見せる彼ららしさがあった。
「「「ベイビーアイラブユーだぜ!!」」」

 


17.supernova
アルバム『orbital period』収録
BUMPは誰かに向けて曲を作っても、それがリスナー全員に作用する魅力がある。物事を自分に置き換える想像力と、感情移入を言葉にする力がある。
この楽曲が聴けたことが奇跡だった。
でも必然だった。

「君の存在だって いつでも思い出せるけど
   本当に欲しいのは 思い出じゃない今なんだ」

だから昔の痼りを水に流そう。決別しよう。

 


18.流れ星の正体
アルバム『aurora arc』収録
時間を乗り越えて伝えにきた。
『天体観測』のほうき星になって乗り越えてきた。
控えめだけど、確実にBUMPの歌詞は私に届いた。


「太陽が忘れた路地裏に 心を殺した教室の窓に
   逃げ込んだ毛布の内側に 全ての力で輝け 流れ星

   お互いに あの頃と違っていても

   必ず探し出せる 僕らには関係ない事
   飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け」


ここに藤くんの叫びがあった。

 


encore00
メンバーを呼ぶ暗転のドームで自然発生的な「supernova」のサビを会場全体で唄う。これが文化なのかはわからないが、真似しようともできない美しさがあった。


encore01.同じドアをくぐれたら
アルバム『ユグドラシル』収録
どこかで何年ぶりだとか、この曲は貴重だとか、BUMPのファンでライブ何回も行ってて、それもまた楽しみ方の一つだと思う。BUMPを好きになって日が浅い時期に確実に救われた楽曲は一生の宝物になる。そうなった。


「振り返らないで 悔やまないで 怖がらないで
   どうか元気で」
誰にでもどうしようもない時期があるけど、その感覚を心のどこかで忘れたふりして覚えている。乗り越えたらちょっとはマシな人間になれるのかなって謳っていた。

 


encore02.ガラスのブルース
アルバム『FLAME VEIN』収録
この曲の、あの合唱がしたかった。
BUMPが保てる観客との一体感は、Cメロの合唱があってこそだと思う。私と4人と3万6000人の命を燃やした光景はあまりに眩しかった。

 


encore03.バイバイサンキュー
アルバム『present from You』収録
藤くんのMCのあと、じゃあもう一曲やっちゃおうかなって呟いてギターを持ってイントロを弾き始めた。きっとメンバーにも言ってない完全サプライズだったのだろう。照明もプロンプターも反応せず、さながら路上ライブのようだった。


10年間、あぁなんか嫌だなとか、息苦しさとか、泣きたいほど理不尽な瞬間とか、ここまで作り上げたものが報われなかったりとか、そんなことばかりだったけど、どんな時もBUMP OF CHICKENは同情せず、悩みを聞いたりせず、精神的に膝を抱えた時に目と耳から私を支えてくれた。今までBUMPを聴いてきた人も、これからBUMPの楽曲に出会う人も、きっと等しく心に響くと確信する。
「僕の場所はここなんだ
   おじいさんになったって 僕の場所は変わんない
   これから先 ひとりきりでも
   -うん、大丈夫! みんなは ここで見守っていて
   見守っていて」

 

 


アーティストはリスナーに伝える手段を追い求める。
BUMP OF CHICKENの歌には絶妙な距離感がある。
そこに気付くことに時間はあまり関係ない。
旧譜が新譜だった時代にファンになった人も、いま好きになった人も一緒になって彼らから受け取った生き方をじっくりと感じ取ればいい。
少し離れて、また戻ってきたら同じ曲が違う歌に聴こえるかもしれない。
本当に良いライブだった。ライブでは基本的に充たされることに重点を置いていたが、今回は一曲一曲の大切さを噛みしめる機会となった。

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